いがみ建築工房

私たちの家づくり9ヶ条

Our 9 Articles of House Building

第1条​

私が家づくりを
失敗したくないのです

恥ずかしい家をつくりたくないのです、後悔したくないのです。お客様以上に。
この気持ちは、お客様よりも強いと思います。
いい家をつくろうと、つくり手がこだわるからいい家ができる。
プロとして、いい家にこだわるのです。

第2条​

あえて代用品で
つくりたくない

少し手を伸ばせば、すぐに本物を手に入れることが出来ます。
無垢の木、漆喰、木の断熱材。どれも簡単に手に入るのに、
あえて工業製品や加工品を使う意味がないと考えます。
あえて工業製品を使う意味は、つくり手側の理屈のみであって、
住まい手にとっての良き住み心地には1ミリも貢献しません。
むしろ害です。

第3条

いい家の答えは
いくつもない

家をつきつめていくと、いい家の答えは”いくつも無い”という事がわかりました。
私たちプロは、いい家をつくる方法を知っています。
どんな素材で、どんな工法で家を建てたらいいのかを、知っています。
そして同時に、その素材をそのまま使って家を建てることがいかに難しいものかをも、知っています。

第4条

自分が住む家と
お客様の家は別、
とは言いたくない

私はどんな家でも建てる事ができます。最善の素材を使い、最善の工法で。
しかし、『私、個人の趣味で建てる家と、お客様の家は別です』
とは、言いたくないのです。
私が住みたい家をお客様の家でもつくりたいのです。

第5条

30年後に
負の遺産にしたくない

家族の生活スタイルの変化にどこまでもついていく家がいい。
家の寿命は間取りの寿命。
寿命の短い家を建てたくない。
30年後子供達が処分に困るような家を建てたくない。
30年後の住まい手のライフスタイルはわかりませんが、
30年後の子供達にとって ”暮らしやすい家”をつくることはできます。
建てた当時、最善の家は、30年後は最悪になる。
伊神の家は建てた当時だけでなく、30年後も60年後も暮らしやすさが持続する家なのです。
家族のスタイルの変化にいくらでも対応できるのです。

第6条

いい素材をケチりたくない、
たっぷり使いたいのです

良い素材は、値段が高いのです。良い素材ばかりで家をつくると、当然家の値段が高くなります。
良い材料をケチる事なく、値段を抑えることを考えました。
家づくりは、ゴミが大量に出ます。高級材料も使えば資材ですが、あまればゴミです。
さらにゴミの料金も建築費に含まれています。
処分するゴミを減らすことは、価格を抑える一つです。
つまり、いい素材をたっぷりと使いつつ、価格を抑える方法とは、
家の形を統一すること、規格化することでした。
断熱材は、セルロースファイバー、壁は漆喰。
と仕様を決めること、標準化することにより材料のロスだけでなく、
腕の良い職人さんの確保、そして職人さんを専属にすることにより、価格を抑えることができるのです。
さらに施工のロス、ミスも減らす事ができるのです。
ルールを決め、同じことを繰り返すことにより、熟練度が上がり、失敗がなくなっていくのです。

体に毒でない素材を探した結果、この漆喰にいきつきました。
この漆喰もいいではなくて、この漆喰しかダメなのです。

第7条

量を追えば
質は絶対に下がる

10年前までローコスト住宅をやっていました。
当時は家の質の追求よりも、量を追いかけていました。
当たり前ですが、量を追えば質は下がります。質を犠牲にするのです。
年間棟数をするから、仕入れのコストダウンができ、外注費が下がり、
その結果ローコストで家をつくる事ができる。
さらに、棟数をするから、いい職人たちが集まる。のだと。
そう言い聞かされていました。

量を追うために、いろんなものを捨ててきました。
一番大きなものは、私のおもいです。私は、ものを言わなくなりました。
お客様のyesマンになったのです。
つくり手が”おもい”を封じ込めて、いい家ができるはずがありません。
消費財ならばともかく、家づくりは”ものづくり”ですから。

量を追うために、家の価格を下げました。必然的に家の質が下がりました。
ローコスト住宅の私の感想です。
ローコスト住宅は、量が前提。
”質”を前提にして、”質”から家を眺めてみました。それがいがみの小さなお家です。

第8条

家にこだわったら、
この家しかできない事が
わかりました

家にこだわったら、この家に行き着きました。
”型”を持つことにより、家がどんどん良くなっていきました。

いがみの家は型をもっています。
通常”型”(規格)をもっているというと、オーダーメイドじゃないんだ。と
それは、価値の低いものだと思われがちなのですが、それは違います。

型をもつことにより、家がどんどん良くなってきたのです。
型ももち、同じことを繰り返すことにより、細かな調整ができるようになりました。
窓の高さをミリ単位で検討したり、修正したりできるようになったのです。
つまり明確に改善ができるのです。その結果、家づくりをすればするほど、
改良に改良を重ねることになり、どんどん良くなっていくのです。
今現在、建てているお家は、過去の職人さんたちの結晶だけでなく、お客様の意見を取り込んだお家になっているのです。

型といっても量産するための型ではなく、
ブラッシュアップするための型でありました。

型は同じでも同じ家はふたつとない。
同じ型をもった家でも、住まい手が変われば、家は変わります。
家の個性は、家の形でではなく、暮らし方で決まるのです。

過去の一つ一つの家づくりが経験値として、今の家づくりの礎にならないといけないと思うのです。

第9条

どんどん良くなっていく
家がいい

柱、梁といった材木が組み上げられることを上棟と言います。
木組みはカッコ良くて、私は好きです。(木造住宅の醍醐味です)
木組みの醍醐味は上棟時に見ることができます。
そこから床をはり、壁をつくり、と木組みを隠していきます。
工事が進むにつれて、どんどん木が隠れていきます。
どんどん寂しくなります。
美しい木組みが隠されてまでつくられた仕上がりが、美しくないのです。

木造住宅ならば、木が見えた方が素直だと思います。
工事が進むにつれて、どんどん良くなっていく家にしたい。
そして、最高の状態で、お引き渡しをしたいのです。
お引き渡し時、建物の完成時が最高潮ではいけません。
『あの時が一番良かった。』とお客様に言わせてはいけないのです。

住まい手の暮らしがはじまるにつれ、建物が劣化していくようではいけないのです。
家は、住まい手を得て、暮らしてもらいながら、どんどん良くなっていく家がいい。
使い、使い込み、修理をしてまた使う。経年変化を得て、さらに深みを増す。
古くなったものには、味わいと愛着が宿り、私たちをより豊かな気持ちにさせる。
手に馴染むという感覚や、一緒に時を過ごしてきたものたちとは会話ができる。
そんな”もの”たちに囲まれた暮らしは、どれほど豊かなことなのでしょうか。
ものは数や量ではなく、たった一つでもお気に入りのものと長く暮らすこと。
”長く使えること”が前提で、ものづくりをするのであれば、
おのずとものづくりの設計図は決まってきます。
私は、そんな家を目指しています。

ものづくりの設計図とは、素材選びとつくり方です。
味わいのある材料で家をつくれば、家は当然味わいをまといます。
味わいのある材料とは。天然(自然)の材料です。
自然素材は変化します。というか、変化するから自然なのです。
変化しないことは、価値のあることではありません。
変化しないことは、味がないことです。
あえて不自然な素材で家をつくる意味を見出せない私は、
素直に考え、できる限りシンプルに家づくりを考えています。
自然素材で家をつくるためには、自然体で向かうことでしょう。

そして、いくら自然な素材を使っても、住まい手が使いづらい家ではダメです。
家族のスタイルの変化は目まぐるしく変わります。
30年前の家の間取りで家を建てないのと同様に、
今ばく然と建てた家は30年を待たずに使いづらい間取りになるのです。
20年後にリセットできる家がいい。
子供と一緒の時期よりも子供が巣立った後、夫婦二人の期間の方が長い。
だから、いつでもリセットできる家がいい。それが自由度の高い家。
注文住宅のデメリットである、リフォームに金がかかること、
間取りの変更が難しいことが、暮らしづらい家の正体です。
建築当時はこれで良かったんだよなあ〜。でも今は使いづらくなったなあ〜。
そんな言葉で、なげく必要はありません。
一旦建ててしまった家でも、その後、我慢して暮らすことはもはや必要ないのです。
いがみの家は、家族の変化を前提に家を考えています。
家づくりに家族の変化が織り込まれている事が、ミソです。