いがみの宣言書

「技術力の低さを建材、
工法でごまかすような
仕事だけはしたくない」
そこにこだわるから、
いがみ建築工房なのだと思う。

1996年。当時欠陥住宅という言葉が世間を騒がせていた。
壁紙にひびが入る=欠陥住宅
床に隙間ができる=欠陥住宅
私のモットーは「クレームのない家づくり」だった。

「クレームのない家」がいい家だと思っていた。
壁にひびが入りにくくする為に、集成材とビニールクロスを使う。
床に隙間ができないように、工業製品(新建材)を使う。
クレームのない家を追求すればするほど、
自然素材は使えなかった。

木は、ちぢむ、曲がる、隙間があく。
しっくいは、ひびが入る、などなど・・・・・。

お客様からこんな言葉を頂戴していた。
「白い壁はよごれるからいやだ」
「床が傷つくのがいやだ。
「自然素材は掃除が大変」
「人が住めば当然よごれます。
おまけに時がたてば色は変わります。

最愛の家族がつけた傷はまさに家族の軌跡、
歴史そのものです。
それを味といわないでなんといいましょう」
そんなあたり前のことを、
お客様に面と向かって言えなかった。

「いつまでこんな家づくりを続けるのか?」
「クレームから逃げるのではなく、挑戦してみよう」

そして「脱ビニールクロス宣言」

積極的に新しい試みに挑戦し、
失敗を恐れず、経験値にする。
失敗したら素直に認め、
会社あげてみんなで直す。

技術力の低さを建材、工法でごまかすような仕事だけはしたくない。
それがプロとしての最低限のたしなみ。

木を知り尽くしている大工。
しっくいを塗りこなすことができる左官。
天然木、しっくい、どちらも扱いが難しい素材。

職人の経験と腕が試される。
うそがつけない。
ごまかしがきかない素材に対して、
ごまかしがきかない技術、
匠の技で対抗する。

真剣勝負。

私のモットーは「あたり前の家づくり」に変わった。
住まい手の身になって家づくりをしているか。
作り手優先、売り手の都合で素材選びをしていないか。
或いは、日々の技術の鍛錬を怠るが故に、
低い技術力を隠すために、
簡単な材料を使っていないか。

2007年、福田首相が「200年住宅構想」をうちあげた。
その意図は、家を箱として
200年もつ家をつくろう、というかけ声だった。
しかし、本当に200年もつ家とはどんな家だろうか?
200年もつ家とは、200年愛され続ける家だ。
必要でなければ、残らない。

可愛がられ、必要とされ、
世代を超えて大切にされ、
後世に残していこうと思われないと
いくら頑丈につくっても壊される。

関心をもたれ、
愛着をもって、
長く長く必要とされる存在であり続ける、家。

その間には、何度も何度も修理、修繕が必要だ。
修繕のことを考えても、
当然使う材料は無垢の木であったり、
むかしからあたり前にある材料でつくるべきだ。
お寺や神社のように。

本物の材料は、修理ができる。
嘘のものは、交換はできるが、修理ができない。
もっと言えば、その時代に同じものがあるとは限らない。
200年後もきっとあるだろう材料で家をつくり、
家族みんなといがみ建築工房で家を守る。
世界に一つしかない私たちの家の本当の価値は、
その家族みんなの歴史そのもの。

それこそが本物の価値
200年もつ住宅はその結果にすぎない、と私は思う。

真剣勝負。いがみ建築工房