外は雨。
家の中は、静かな現場です。
ガリガリとコテが壁にこすれる音だけが響きます。
ただいまは、左官屋さんの一人舞台です。
話し声もなく、当然ラジオの音もなく、静かな現場です。
ゆっくりですが、着実に壁が漆喰で白く塗り込まれていきます。
左官屋さんが右手に持っているものが、“コテ”と言います。
コテは、手道具です。
コテの音は、他のノイズにのみこまれてしまうくらい、小さな音ですが
静かな現場では、その音は響きます。
なんと心地いいものでしょう!
現代の家づくりでは、電気工具が現場の音をつくっていますが、
左官屋さんのコテは、いまだに、コテです。
取手のついた、ひらっぺたい板だけです。
昔から変わりません。
コテという手道具は、手の延長です。
手の感覚でする仕事は、まさしく職人技です。
経験と、根気がいる仕事です。
静かな現場は、職人さんたちの心を映しているようで
私も心地よかったです。
外の世界は、いろいろと大変ですが、いがみのお家づくりの現場は
まわりから取り残された世界のように、静かです。
静かな現場は、
私の心を落ち着かせて、じっくりと自分の仕事と向き合えるいい環境です。
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